「もうここまで頑張ったんだから…」「ここまで投資したんだから…」
私たちは、過去の努力や投資が大きければ大きいほど、それを無駄にしたくないという心理が働き、合理的ではない判断をしてしまうことがあります。これが、「サンクコスト」の罠です。サンクコストとは、 「埋没費用」 とも呼ばれ、過去に投資した時間、お金、労力など、 「もう取り戻すことのできない費用」 のことを指します。
例えば、
- 3年間付き合った恋人との関係が冷めきっていても、「別れたら、3年間が無駄になってしまう…」と考えてしまう。
- 10万円で購入した株が値下がりしていても、「損切りしたら、10万円が無駄になってしまう…」と売却できない。
- 5年間勤めた会社に不満があっても、「転職したら、これまでの経験が無駄になってしまう…」と辞められない。
これらはすべて、サンクコストに縛られた思考の典型例です。
サンクコストに縛られると、私たちは、 「過去の損失」 を取り戻そうとするあまり、 「未来の可能性」 を見失ってしまいます。
3年間付き合った恋人の例で言えば、「別れたら、3年間が無駄になってしまう…」という思考にとらわれている限り、あなたは、新しい出会いや、より幸せな恋愛の可能性を閉ざしてしまうことになります。
10万円で購入した株の例で言えば、「損切りしたら、10万円が無駄になってしまう…」という思考にとらわれている限り、あなたは、より有望な投資先へ投資する機会を失ってしまうことになります。
5年間勤めた会社の例で言えば、「転職したら、これまでの経験が無駄になってしまう…」という思考にとらわれている限り、あなたは、自分の才能や情熱を活かせる、よりやりがいのある仕事に就くチャンスを逃してしまうことになります。
サンクコストは、まるで、 「過去への執着」 という名の重たい鎖のように、私たちの足を引っ張り、前に進むことを阻んでしまうのです。
サンクコストに縛られてしまうのは、決して、あなたが「意志が弱い」からではありません。
そこには、人間の心理的なメカニズムが深く関わっています。
- 損失回避: 人間は、利益を得ることよりも、損失を回避することを強く求める傾向があります。サンクコストを諦めることは、「損失」として認識されるため、心理的な抵抗感が生じやすいのです。
- コミットメントと一貫性: 一度決めたことを貫き通したいという心理が働きます。過去の投資が大きければ大きいほど、その決定を正当化しようとし、方向転換することが難しくなるのです。
- 自己正当化: 過去の決定を正当化し、自己肯定感を保とうとする心理が働きます。サンクコストを認めたくないという気持ちから、現実を直視することを避けてしまうのです。
これらの心理的なメカニズムが複雑に絡み合うことで、私たちは、サンクコストの罠から抜け出すことが難しくなるのです。では、どのようにすれば、サンクコストの呪縛から解放され、未来の可能性を切り開くことができるのでしょうか?
以下に、3つのステップをご紹介します。
ステップ1:サンクコストを認識する
まずは、あなたが、どんなサンクコストに縛られているのかを、客観的に認識することが重要です。
- 過去の恋愛
- 仕事
- 投資
- 人間関係
- 趣味
など、あらゆる場面において、「もう取り戻すことのできない費用」に執着していないか、冷静に振り返ってみましょう。
ステップ2:未来の可能性に目を向ける
サンクコストに縛られている状態は、まるで、バックミラーばかり見て運転しているようなものです。過去の失敗や損失にとらわれ過ぎると、前方の景色が見えなくなり、事故を起こしてしまう可能性も高まります。過去の投資は、あくまでも「過去」のことです。重要なのは、「今」そして「未来」に、どんな可能性があるのか?に目を向けることです。
- もし、今の恋人と別れたら、どんな新しい出会いがあるだろう?
- もし、今の会社を辞めたら、どんな仕事に挑戦できるだろう?
- もし、この投資を諦めたら、どんな有望な投資先があるだろう?
未来の可能性を具体的にイメージすることで、サンクコストを手放すことへの心理的抵抗感を減らすことができます。
ステップ3:決断し、行動する
サンクコストを手放すためには、最終的には、「決断」し、「行動」するしかありません。
「別れる」「辞める」「売却する」
これらの決断は、勇気がいることかもしれません。
サンクコストを手放すことは、「損失」ではなく、「未来への投資」です。
「もうここまで頑張ったんだから…」この言葉は、時に、私たちを勇気づけてくれる言葉です。
しかし、それが、未来の可能性を閉ざす「呪縛」となってしまってはいけません。
過去の投資にとらわれず、勇気を持って決断することで、サンクコストの罠から解放され、より自由で、より幸せな人生を手に入れることができるはずです。
第1章では、「自然の摂理」に逆らわずに、自分らしさを追求することが最初の一歩だとお伝えしました。続いて第2章「健康の土台」、第3章「仕事とお金」に進むにつれ、第1章でのある種、自己中心的な決定を現代の価値に転換することを考えることになります。 第1章「自然の摂理」では「唯一無二の一点モノである、ワクワクすることを制御しない」「この時点では、稼げるかどうかは無視する」「心底やってみたいと体が軽く感じるかどうか」と覚えておき、想いを結晶化する感覚でいてください。