私たちは、日常生活の中で、つい不満を口にしてしまうことがあります。「給料がもう少し高ければ」「もっと時間に余裕があれば」など、「ない」ものに目を向けてしまうと、際限なく不満は生まれ、いつの間にか不平不満を口にすることが習慣化してしまうことさえあります。
しかし、このような「不足」の意識に支配されてしまうと、目の前にある、なんでもない「当たり前の幸せ」という宝物に気づくことができなくなり、簡単に不幸になれてしまいます。たとえ些細なことでも、「ある」ものに目を向け、「感謝」の気持ちを持つように意識することが、幸せに生きるための第一歩です。
例えば、「家族が毎日健康に過ごせること」「屋根のある家に住めること」「美味しい食事にありつけること」など、普段は当たり前だと感じていることにも、目を向けてみてください。
家事などもその一つです。子供の送迎、食事の用意、洗濯、掃除など、毎日のルーティンとしてこなしていると、面倒だと感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、これらの家事は、家族の健康や生活を支える、かけがえのないものです。
家事や育児を担ってくれているパートナーがいる方は、ぜひ、心からの「ありがとう」の気持ちを伝えてみてください。感謝の言葉を伝えることは、相手への感謝の気持ちを表すだけでなく、自分の心をも温かい気持ちで満たしてくれます。
感謝の心を持つことは、単に気持ちの問題だけでなく、科学的にも多くのメリットがあることがわかっています。感謝の気持ちを感じると、副交感神経が活性化され、ストレスホルモンであるコルチゾール値が低下することで、心身のリラックスをもたらします。
アメリカのカリフォルニア大学バークレー校が行った研究では、110人の大学生を対象に、定期的に感謝の気持ちを感じることの効果を検証しました。その結果、感謝の気持ちを持つように意識した学生たちは、そうでない学生たちに比べて、ストレスをより上手く管理し、逆境に立ち向かうための精神的な強さを身につけていることが明らかになりました。
また、「笑い」も、私たち人間が持つ強力な武器の一つです。
動物の中でも、人間だけが、喜びや楽しさを感じたときに笑うことができるというユニークな能力を持っています。笑うと、ストレスホルモンであるコルチゾール値が低下し、反対に、幸福ホルモンと呼ばれるエンドルフィンが分泌されます。エンドルフィンには、気分を高め、リラックス効果をもたらすだけでなく、免疫力を向上させる効果もあると言われています。ある研究では、笑うことでストレスホルモンが39%も減少することが確認されています。また、笑いには、痛みを和らげたり、血圧を安定させる効果もあるという研究結果も報告されています。
しかし、大人になると、子供時代に比べて、笑う機会が減ってしまう傾向にあるようです。世論調査会社ギャラップ社が140万人を対象に行った大規模な調査によると、人は23歳をピークに、笑う回数が徐々に減少していくという結果が出ています。
これは、社会に出るようになり、責任やストレスが増えることで、自然な笑顔を失ってしまう人が多いことを示唆しています。簡単にいうと「スーツを着ると同時に笑顔を失っていく」ということです。
仕事で成果を上げるためには、もちろん、論理的な思考や戦略も重要です。しかし、それ以上に大切なのは、共に働く仲間との良好な人間関係です。職場においても、陽気で明るい雰囲気を作り出し、笑顔を交えながらコミュニケーションをとることで、チーム全体のモチベーションと生産性を向上させることができます。
特に、リーダー的立場にある人は、意識的に明るい雰囲気作りを心がけることが重要です。立場が上になればなるほど、周囲からは「近寄り難い」「怖い」と思われがちですが、笑顔を絶やさず、ユーモアを交えながらコミュニケーションをとることで、部下との距離を縮め、より働きやすい環境を作ることができます。
感謝の気持ちと笑顔は、人間関係を円滑にし、信頼関係を築くための魔法です。人生の大半は、家族、友人、職場の人など、様々な人たちとの関わりの中で成り立っています。一匹狼のように一人でいるよりも、気の合う仲間と楽しく笑い合える時間を大切にし、日頃から感謝の気持ちを忘れずに持ち、笑顔を心がけることで幸福度は確実に高まります。