「論語と算盤」は、日本の資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一が、約100年前に書き残したビジネス書です。彼は470社以上の設立に関与した企業は、JRやみずほ銀行、帝国ホテルやキリンビール、商工会議所や王子製紙など、今でも私たちの日常に馴染んでいる会社ばかりです。時代を超えて読み継がれてきたその教えは、現代の私たちにとっても、多くの気づきを与えてくれます。渋沢栄一は、単なる利益追求ではなく、道徳と倫理に基づいたビジネスのあり方を説きました。
「論語と算盤」の「論語」は、孔子の教えである「仁」「義」「礼」「智」「信」といった儒教の思想を指します。これは、「人として正しい行いをし、道徳的な行動をとることを重視する考え方」です。一方、「算盤」は、「経済活動や利益」を象徴としています。ビジネスの世界では、利益を追求することはもちろん重要です。しかし、利益だけを追い求め、倫理やモラルを軽視してしまうと、社会全体の幸福を損なう結果になりかねません。渋沢栄一は、「論語」と「算盤」は、一見、相反するもののように見えるが、両者は決して切り離せるものではなく、両立させることが重要であると説いています。現代社会は、グローバル化、情報化、技術革新などが急速に進展し、ビジネス環境も複雑化しています。このような時代においては、短期的な利益よりも、長期的な視点に立った経営が求められます。これは個人にとっても同じ意味を持ちます。企業や個人は、ステークホルダー(顧客、従業員、株主、地域社会、家族など)からの信頼を得ることが、持続的な成長のために不可欠です。そのためには、倫理的な行動を徹底し、社会に貢献していくことが重要になります。
「計算ロジック」と「人間性」の両輪
現代では、データ分析や論理的思考力など、いわゆる「計算ロジック」が重視される傾向にあります。もちろん、これらの能力は、ビジネスを成功させる上で非常に重要です。ビジネスで儲かるために何をするかを考えると、出世や売り上げなど成果に目が行きがちです。事業を始めるときは「世の中をもっとよくしたい」「こんなものがあったらいいな」といった夢を持ってスタートしたはずなのに、いつのまにか目先のお金のことばかり考えていて、想いが欠落してしまうことはよくあることです。利益を出すために筋が通っているロジカルシンキングや、マーケティングは「算盤」部分の利益を追求する大切な要素のひとつですが、「お金」を重視しすぎて人や地球環境を軽んじ、愛がない対応をする人が増えてしまったように思います。
しかし、ビジネスは結局のところ、人と人との繋がりや自然環境とも紐づいて複雑に成り立っています。どんなに優れた技術やビジネスモデルを持っていても、顧客や取引先、そして一緒に働く仲間からの信頼を得ることができなければ、長期的な成功は難しいでしょう。論理的に正しいことだけでなく、人として誠実であること、相手を思いやること、感謝の気持ちを持つことなど、「人間性」を育むことが、ビジネスの成功にも繋がっていくのです。
私も、起業当初は、「算盤」ばかりを重視し、「論語」を軽視していた時期がありました。事業を成長させること、利益を上げることばかりに目が行き、多くの失敗を重ねてきました。しかし、これらの経験を通して、私は、ビジネスの成功には、「人間性」が不可欠であることを学びました。そして、改めて「論語と算盤」の教えの大切さを実感したのです。
現代社会は、環境問題、貧困問題、人権問題など、多くの課題に直面しています。
これらの課題を解決し、持続可能な社会を実現していくためには、ビジネスの世界においても、「論語と算盤」の精神が求められています。
私たちは、
- 倫理観と道徳心を持ち、社会に貢献できるビジネスを行うこと
- 環境問題や社会問題にも目を向け、持続可能な社会の実現に貢献すること
- 関わる人の理想の働き方を、可能な限り創造すること
などを意識していく必要があるでしょう。
論理の理解は大事だが、数字だけじゃないのが人間の社会であります。
つまり「計算ロジック」と「人間性」の両輪が必要ということです。
論理的に正しくても、倫理的に正しくないパワハラや長時間労働の強要など、モラルが欠如してる現代病に陥らないようにしましょう。一方で、熱い気持ちだけで勉学に励まないのはお門違いです。
「人としての温かみ」と「ロジカルな思考」のバランスを見つけ、アップデートすることが共存の鍵となります。
「クセ」が人を惹きつける
「あなたって、ちょっとクセがあるよね」。そう言われたとき、あなたはどんな気持ちになりますか?もしかしたら、「個性がない」「面白みに欠ける」といったネガティブな評価として受け止めてしまうかもしれませんし、クセを褒め言葉として受け取る人もいるでしょう。
私は、この「クセ」こそが、これからの時代、ますます重要になってくると考えています。
私自身、資金調達やプレゼンの場で、「事業内容はいいんだけど、クセがないよね」というフィードバックを何度か受けたことがあります。当時は、自分では個性の塊だと思ってプレゼンをしていたので、正直、ショックでした(笑)しかし、その経験を通して、私は「クセ」の本当の意味に気づかされました。
「正しい」だけでは、人の心を動かせない
私が当時、プレゼン資料を作成する際に意識していたのは、
- 論理的に矛盾なく、
- 正確なデータに基づいて、
- 分かりやすく説明すること
でした。しかし、どんなに「正しい」情報を、どんなに「完璧な」プレゼン資料にまとめたとしても、人の心を動かし、記憶に残るようなプレゼンをすることはできません。なぜか退屈でつまらなさを感じてしまうのです。
私の資料はビジネス目線では綺麗なものに見えるけど、どこか型にハマっていてオリジナリティがない=「クセが無い」と感じたのでしょう。テンプレートに当てはめることは、誰でも調べて取り組めば可能です。同じ時期に一斉にスーツを着て就活して、面接では模範解答のような同じことを言っても面接官の印象に残らないのと似ています。個人や会社に備わっているオリジナリティや、最も偏愛している独自性を表現していくことが大事です。なぜなら、人は「感情」で動く生き物だからです。
人を惹きつけるのは、「感情」を揺さぶるもの
私たちが、ある商品を購入したり、あるサービスを利用したりするとき、そこには必ずと言っていいほど、「感情」が関わっています。
- 「かっこいい」「かわいい」「おしゃれ」といった憧れの気持ち
- 「新しい」「面白い」「便利そう」といった好奇心
- 「共感できる」「応援したい」「自分もそうなりたい」といった共鳴
これらの「感情」こそが、私たちを「行動」へと駆り立てるのです。
「クセ」とは、言い換えれば、「あなただけの個性」「あなただけの魅力」です。
それは、
- あなたの考え方
- あなたの価値観
- あなたの経験
- あなたの好きなもの
- あなたの嫌いなもの
など、あなたという人間を形作る、あらゆる要素から生まれてきます。そして、この「クセ」こそが、他の誰にも真似できない、あなただけの「強み」となるのです。個性を隠さずに会社や友人と繋がると、戯言だけではない深い共感を得ることができます。
「論語と算盤」 × 「オリジナリティ」 = 最強の組み合わせ
もちろん、ただ「個性的」であればいいというわけではありません。
「論理的思考力」は、ビジネスの世界において、依然として重要なスキルです。しかし、論理的思考力だけでは、人の心を動かすことはできません。「ロジカルシンキング」という土台の上に、「個性」「人間性」というスパイスを加えることで、初めて、人の心を惹きつける、魅力的なプレゼン、魅力的な商品、魅力的なサービスが生まれるのです。とにかく、好かれなきゃ始まりません。これからの時代は、ますます「個性」が重視される時代になっていくでしょう。画一的なサービスや商品は、AIやロボットに取って代わられていく可能性があります。しかし、人間だけが持つ「個性」「感性」「創造性」は、決して機械には真似できません。あなたの「クセ」を恐れることなく、むしろ、それを武器に変えていくことで、あなたは、他の誰でもない、あなたにしかできない仕事で、インパクトを与えることができるはずです。
最高の競争戦略は、戦わずして勝つことです。もう、戦わなくていいのです。戦おうとするから、本質がぼやけ、小手先のテクニックに走ってしまいます。あえて厳しいところに参入する必要はなく、すでに細胞レベルでふるいにかけられたあなた自身の独自性をだし、優位に立てるポジショニングを見つけましょう。あなたの「クセ」が、あなたを変える力になるのです。