かつて、日本社会は「経済成長」という単一の価値観に突き動かされていました。1980年代から2000年代にかけての高度経済成長期、経済的豊かさは成功の証であり、人々はお金を追い求めることに躍起になっていました。寝る間も惜しんで働き、企業は利益を追求し続けました。その結果、日本は世界に類を見ないスピードで経済大国へと成長を遂げ、経済成長率は年平均10%を超えました。しかし、この輝かしい経済成長の陰で、私たちは何を失っていたのでしょうか?
経済成長を最優先した結果、深刻な環境問題が顕在化しました。工場から排出される煙は大気を汚染し、排水は川や海を汚染し、豊かな自然は破壊され、公害問題も深刻化しました。私たちは、経済的豊かさと引き換えに、地球環境を犠牲にしてきたのです。人間が暮らしやすくなったというのは確かですが、地球を痛め人間が得をするような構図に見え、目先の便利さに没頭し、母なる大地を汚染していて、最終的には自分の首を絞めている状態だということです。昨今のSDGsの流れは経済成長を追求することに一旦ストップをかけた形だと思います。
さらに、物質的な豊かさだけが重視される社会は、人々の心を蝕んでいきました。「お金があれば幸せになれる」という価値観に縛られ、人々は長時間労働に疲弊し、ストレスを抱え、心の余裕を失っていきました。バブル崩壊後、経済成長は鈍化し、人々は「お金」だけでは真の幸せは得られないことに気づき始めます。そして、2011年の東日本大震災と2020年からのパンデミックという二つの大きな出来事が、私たちの価値観を大きく転換させる転機となりました。