私たちは皆、異なる個性、価値観、考え方を持っています。そのため、「合わない」と感じる人がいるのは、当然のことです。重要なことは、「合わない」という感情を否定するのではなく、「そういう考え方もあるんだ」と、まずは受け入れることです。
心理学者のアルフレッド・アドラーは、「すべての悩みは、対人関係の悩みである」という言葉を残しています。私たちは、他人との関わりの中で、喜びや楽しみを感じる一方で、時に、衝突や摩擦を経験することもあります。しかし、アドラーは、 「課題の分離」 という考え方を通して、人間関係の悩みから解放される方法を提示しています。「課題の分離」とは、「自分のできること」と「できないこと」を明確に分けることであり、「他者の課題に踏み込み過ぎない」「自分の課題に責任を持つ」という自律的な生き方です。
仕事で合わない人がいることは、決して珍しいことではありません。むしろ、多様な価値観が存在する現代社会においては、当然のことと言えるでしょう。「仕事で合わない人」だからといって、その人の人格まで否定する必要はありません。なぜならば、仕事とプライベートでは、求められる役割や関わり方が異なるからです。
例えば、
- 仕事では、非常に厳しい上司が、プライベートでは、子煩満で優しい父親である
- 仕事では、意見が合わない同僚が、趣味の場では、最高の仲間になる
ということは、よくあることです。
仕事上では、目標達成のために、意見をぶつけ合ったり、時には、厳しい言葉を交わしたりすることも必要です。しかし、それはあくまでも、「仕事」という共通の目的を達成するための一つのプロセスであり、決して、その人の人格を否定するものではありません。目的のある仕事とプライベートを明確に距離感を持って分けることで、私たちは、より冷静に、より客観的に、人間関係を捉えることができるようになるのではないでしょうか。理想は仕事もプライベートもバッチリ合うのが最高ですが、夫婦といえども全て合致することは、あり得ません。
また、人間関係を「損得」で判断してしまう風潮があるように感じます。「感覚」ではなく「思考」で選んでいる状況です。
「あの人と付き合っても、メリットがない」
そんな風に、計算高い人間関係を築いてしまう人も少なくないのではないでしょう。
しかし、家族や親しい友人との時間、地域社会への貢献、趣味仲間との交流など、私たちの人生を豊かにしてくれるのは、決して、「損得」で計算できるものではありません。
「なぜかわからないけど、この人と一緒にいると楽しい」
そんな風に、 「理屈を超えた損得抜きの魅力」 を感じられる人との出会いは、濃度の高い時間を送れると思います。つき合う人を損得で選んでいくと、相手にもそうされるようになり、安心できる関係性を築くことができません。
「みんな違ってみんな良い」
この言葉の通り、私たちは皆、異なる個性や価値観を持っており、それこそが、人間社会を豊かに彩る要素となっています。しかし、自分と異なる価値観を持つ人を前にすると、
- 反発してしまったり
- 批判してしまったり
- 無理に自分の価値観を押し付けてしまったり
することがあります。
大切なことは、 「違い」を認め、「違い」を尊重する柔軟さ です。そして、全部受け入れる必要はないが「自分とは違う」という前提で、相手と接することです。それでもやっぱり合わなければ、物理的に距離を取って離れ、相手を変えようとしないことです。
まとめると、
- 相手の「人格」ではなく、「行動」に目を向け、冷静に状況を判断すること
- 「損得」を超えたつながりを大切にすること
- 相手の「違い」を受け入れ、尊重すること
が、良好な人間関係を築く一つです。