「お金があれば幸せになれる」
誰もが一度は、そう思ったことがあるのではないでしょうか?
確かに、お金は、生活の基盤であり、衣食住を満たし、様々な選択肢を与えてくれます。しかし、「お金」と「幸せ」の関係は、私たちが考えるほど単純ではありません。「お金で幸せは買えるのか?」という、多くの人が抱える疑問について、最新の研究結果やデータも交えながら、考えていきましょう。
2000年代初頭、幸福研究の第一人者であるエリザベス・ダンとマイケル・ノートンは、「収入(年収)」と「幸福度」の相関を調べました。「年収4万ドル(約400万円)までは、年収と幸福度は比例するが、年収600万円になると、カーブは横ばいになり、年収800万円を超えると、あとは年収が大きく増えても、幸福度の増加は緩やかになる」という研究結果を発表し、世界に衝撃を与えました。民間給与実態統計調査(令和4年)によると日本人の平均年収は約458万円です。この研究は、「お金で買える幸せには限界がある」という考え方を広め、「年収7万5000ドルの壁」という言葉まで生まれました。
しかし、2023年、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授らの研究チームが、新たな研究結果を発表しました。それによると、「年収7万5000ドル(約1100万円)以上でも、幸福度は上昇し続ける」というのです。さらに、この研究では、「もともと幸福度の高い人ほど、年収増加による幸福度の上昇幅が大きい」という興味深い傾向も明らかになりました。つまり、幸福度と年収の関係は、一概に断定できるものではなく、
- 個人の性格や価値観
- 幸福度に対する感じ方の個人差
- 時代や社会状況
など、様々な要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
では、なぜ私たちは、「お金」だけでは、幸せを得られないと感じるのでしょうか?その理由の一つとして、「欲求の適応」が挙げられます。人間は、収入が増えると、それに応じて生活レベルを上げ、より高価なものを求めるようになります。しかし、その「満足感」は、長くは続きません。すぐに新しい「欲しいもの」が現れ、再び満たされない気持ちに陥ってしまうのです。これは、まるで、ラットレースのように、走り続けても決してゴールにたどり着けない状態といえるでしょう。
「経験」にお金を使おう
「Happy Money: The New Science of Smarter Spending(邦題:幸せをお金で買う5つの授業)」の中で、「お金で幸福度を高めるには、モノではなく経験に使うべきだ」と提唱しています。旅行やコンサート、スポーツ観戦、美味しい食事など、五感を刺激するような経験は、私たちに鮮烈な記憶と感動を与え、幸福度を高める効果があるとされています。また、「経験」は、
- 新しい知識やスキルを身につける機会
- 人間関係を広げる機会
- ストレスを発散し、心をリフレッシュする機会
などを提供してくれるため、成長や自己肯定感の向上にも繋がります。
この視点は、単に物質的な豊かさを追求するのではなく、充実した経験を重視することの大切さに気づかせてくれます。
日本は、なぜ幸福度が低いのか?
世界幸福度ランキング2023年版によると、日本は47位と、先進国の中では最低レベルという結果が出ています。労働生産性も低く、幸福度も低いという結果は、何かが間違っているのは明白です。これは、「長時間労働」や「仕事のストレス」など、日本社会特有の要因が影響していると考えられます。長時間労働は、
- 心身に悪影響を及ぼし、健康リスクを高める
- 家族や友人と過ごす時間を奪い、孤独感を深める
- 趣味や自己投資など、活動の時間を制限する
など、様々な悪影響をもたらします。
「お金」を稼ぐために、心身の健康や大切な人との時間を犠牲にしてしまうことは、本末転倒と言えるでしょう。いくら長生きして、人生の大半を働き続け、今よりもっと稼ぐことを目指しても、身体を壊してしまっては幸せとは言えません。幸福度と年収の関係を理解して、身体と時間を大切に適度に保つことも大切なのです。
一番の失敗は、失敗が少ないこと
「失敗は成功のもと」誰もが耳にしたことがある言葉だと思います。
しかし、大人になるにつれ、いつしか「失敗」を恐れ、挑戦することをためらう風潮があるのではないでしょうか。確かに、失敗は、時に私たちを傷つけ、自信を失わせることもあります。しかし、 「一番の失敗は、失敗が少ないこと」 だと考えています。なぜなら、「挑戦」の中にこそ、成長の「種」が隠されているからです。
毎日は、まるでRPGゲームのようなものです。私たちは、様々なクエスト(挑戦)に挑み、その過程で、失敗や挫折を経験しながら、少しずつレベルアップしていきます。そして、経験値を積めば積むほど、より困難なクエストに挑戦できるようになり、より大きな成功を掴むことができるようになります。「失敗」は、決して無駄ではありません。私は、これまで多くの人との出会いを通して、一つの共通点に気づきました。それは、「実際に行動を起こした人の言葉には、不思議な力がある」 ということです。
どんなに素晴らしい理論や知識も、机上の空論に過ぎません。実際に挑戦し、失敗し、そこから学びを得た人の言葉には、まるで険しい山を登頂した登山家の言葉が、私たちに勇気を与えてくれるような生々しさと説得力があり、聞く人の心を揺さぶる力があります。行動することで、教科書には載っていない貴重な学びを得ることができるのです。
失敗はごく自然なことで、1つのデータを加算できたと思うことです。論理的思考力が高い人は、リスクを分析し、回避することに長けています。しかし、リスク回避を優先するあまり、「挑戦」を避け続けてしまうと、どうなるでしょうか?人の寿命が延び、人生100年時代と言われる現代において、「変化」に対応していくことは、これまで以上に重要になっています。定年という概念は薄れ、企業の寿命は逆に短くなっているので、平均寿命という長さの指標から、健康寿命という質への転換が起きています。
「温故知新」のベースを前提に、企業も、個人も、常に新しい情報やスキルを学び続け、変化を恐れずに挑戦していくことで、生き残っていくことができるのではないでしょうか。私たちの身体と同じように、組織やビジネスモデルも、常に新陳代謝を繰り返していく必要があります。古い細胞が剥がれ落ち、新しい細胞が生まれてくるように、古い慣習や考え方にとらわれすぎず、常に新しい風を取り入れていくことも大切です。血流も同じで、血が全身をめぐることで指先まで酸素や栄養を運んだり、老廃物を流してくれたりする役割があります。
川と池の違いにも似ていますが、水の流れがあまり無い池は、淀んでいることが多いです。川は流れがあるので澄んでいて、水が池よりも綺麗です。この違いは人も一緒で、常に隣にいるコミュニティの人達は、同じような価値観なので考えがまとまりやすいですが、その反面、ずっと同じメンバーだと新しい発想が生まれず、池のように淀んでいきます。
気になる人とランチに行ったり、いつもと違う道を通ったりすることで、新しいインプットが増えます。「流れ」というものは常に不要なものを流し去り、綺麗な状態に整えます。常に変化を取り入れていかないと現状維持すら不可能になります。致命傷ではない失敗なら大歓迎で、失敗に慣れていきましょう。