「ブランド」と聞くと、
- 有名企業のロゴ
- 高級ブランドのバッグ
- おしゃれなカフェのデザイン
などを思い浮かべるかもしれません。しかし、「ブランド」とは、単なる「見た目」や「イメージ」の表層的なことではありません。
それは、
- あなたの価値観
- あなたの信念
- あなたの情熱
- あなたのストーリー
など、 あなたという人間を形作る、あらゆる要素の総体 であり、 時代を超えて、人々の心に響き続ける「らしさ」 なのです。会社員であれば、社内での独自ポジショニングを築く方法を明確にしたり、フリーランスや会社経営をしているのであれば、他者から見た時に想起できるブランド化をすることは、闇雲に目の前のことだけをこなす日々から脱却する重要な人生戦略です。
コモディティ化の波。機能的価値を超えた「情緒的価値」の時代へ
かつては、「高品質」「低価格」「高機能」といった「機能的価値」が、商品やサービスの差別化要因として重要視されていました。しかし、技術革新やグローバル化が進展した現代においては、これらの機能的価値は、すぐに模倣され、コモディティ化(均質化)し、商品の市場価値がすぐに低下し、一般化するようになりました。
具体例を挙げると、初期のスマホは高機能・高価格帯の製品が中心でした。しかし、Android OS の登場や中国メーカーの台頭により、低価格帯のスマートフォンが市場に溢れるようになりました。今では、基本的な機能はどの機種も似通っており、ブランドやデザイン、カメラ性能など、機能以外の要素で差別化を図る必要が出てきています。航空券にしても、LCC(格安航空会社)の登場により、コモディティ化が進みました。かつては、航空会社ごとにサービスや価格に大きな差がありましたが、LCC の台頭により、価格競争が激化し、サービス面での差別化が難しくなっています。
消費者は、もはや、「モノ」そのものではなく、
- 「その商品やサービスを使うことで、どんな体験ができるのか?」
- 「どんな価値観を共有できるのか?」
- 「どんなストーリーに共感できるのか?」
Appleの製品に信者が多いのは、機能性は抜群な上に「持っている自分が、かっこよく感じる」といった、「情緒的価値」を求めるようになっています。
「モノ」から「コト」。消費から意味へ
最新の電化製品、流行のファッション、高級車…新しいモノを手に入れるたびに、心が満たされ、豊かさを感じていた時代。しかし、現代では、単に「モノ」を所有することに対する価値観は変化し、本当に大切なもの、意味のあるものを求める気持ちが強くなっています。それは、モノではなく「コト」への価値観の転換。物質的な豊かさではなく、心の豊かさ、精神的な充足感を求める「意味消費」の時代が到来したと言えるでしょう。
大量生産・大量消費社会は、私たちの生活を便利で豊かなものにしました。しかし同時に、モノが溢れかえることで、本当に必要なものを見失い、心の空白を感じやすくなっているのも事実です。心理学者、ティム・カッサーは著書「物質主義の心理学」の中で、物質主義的な価値観が強い人ほど、幸福度が低く、うつ病や不安障害のリスクが高いことを指摘しています。モノは、手に入れた瞬間は満足感を与えてくれます。しかし、その幸福は一時的なものであり、すぐに新しいモノへの欲求に取って代わられてしまいます。
一方、「コト消費」は、モノではなく、体験や経験、自己成長といった「意味」に価値を置く消費行動です。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 旅行やコンサート、スポーツ観戦など、感動や興奮を味わえる「体験」
- スキルアップセミナーやワークショップなど、自己成長に繋がる「学び」
- ボランティア活動や社会貢献活動など、自分以外の誰かの役に立つ「貢献」
- 古着や古材、ヴィンテージ住宅などの一点モノの独自性「歴史」
コト消費は、単なる消費活動ではなく、心の充足感を得られる「投資」と言えるでしょう。
さらに、近年注目されているのが、「意味消費」です。
意味消費とは、商品やサービスの機能や価格だけでなく、その背景にあるストーリーや企業理念、社会貢献といった「意味」に共感して購入する行動を指します。
例えば、
- 環境問題に配慮したサステナブルな商品を選ぶ
- 地域貢献に力を入れている企業の商品を選ぶ
- フェアトレード商品を選ぶ
など、自分の価値観に合った消費活動を選択することで、社会との繋がりを感じ、より大きな満足感を得ることができます。「モノ」から「コト」へ、「消費」から「意味」へ。
価値観の転換期を迎えている今、私たち一人ひとりが、本当に大切なものを見つめ直す時期に来ています。