デザインには見た目以上の意味がある
デザインというと、見た目が独創的で美しいものをイメージされる人も多いでしょう。でも、デザインとは「見た目を綺麗にするだけではない」と僕は考えます。
いままで約500件のクライアントワークに取り組ませていただきました。請け負っていたのは、皆さんが聞いたことのあるような大企業のイベントサイトや、会社のホームページ、アプリの設計などさまざま。デザインの依頼をいただくとき、「見た目の良いもの、カッコいいものを作ってよ」と言われることも多いです。それはもちろんなのですが、僕が考えるデザインは大きく2つに分かれています。
一つ目は「見た目のデザイン」。誰が見ても分かる導線の設計や見ていてなんだか心地よい美しさを表現することは大切です。そして二つ目は「広義のデザイン」。ここをよく見落としがちですが、ただ単に制作すればいいだけでなくクライアントの本当に求めているポイントを拾う作業でもあります。
目的を達成するためのデザイン
いわゆる制作するデザインの仕事に取り掛かる前に、クライアントさんの持っている課題を聞いてみると、綺麗なデザインを作りたいということだけが課題じゃないケースが多いんです。だいたいは売上を増やしたいとか、別のところに悩みや目的があります。これは友人関係にも言えることです。
その課題を聞き取るヒアリング能力も、デザインワークの1つであり、「広義のデザイン」です。課題を可視化、確認、共有してから、課題を解決するためのツールを提案する流れで進めていくことが大切。そうすると、必ずしもデザインワークをしなくても解決できる場合があります。
例えば、「会員さんがいるので、繋がるアプリが欲しい」という依頼の場合、アプリではなく、リアルなイベントでも良かったり、製品を作ることでも良かったり。もしそれでもデザインが必要だと理解すれば、ビジネス構造や使いやすさも考えて整えていく作業が始まります。
良いデザインは見た目だけじゃない
多くの人が持つデザインのイメージって、独創的でアートよりのちょっと理解できないもの?なんて印象もあるかもしれません。でも、基本の構造の上に自分の持っているオリジナリティを乗せたほうが、相手に伝わりやすいデザインになります。
土台となるデザイン方法や理論は守破離でいう「守り」の部分。しっかりとした知識のデータベースが必要。デザイナーの独創的な発想やエッセンスは、ほんの少しでいいのかなと僕は思うのです。あくまでも「デザイン」はクライントや利用する人の目的を叶えるためのもので、自分の発想や個性が強くなると「アート」になるのではないでしょうか。
2つのデザインを一体化させる
デザインはファッションや料理など幅広い分野で使われますが、どれも同じ。例えば料理の場合、カラフルな食材をたくさん使ったとしても、調理する順番や味付けが下手だったら良い料理になりませんよね。それぞれの食材の持つ良さを生かして1つの料理としておいしく完成させることがデザインになります。
これまではビジネス寄りのデザインの話を主にしてきましたが、私たちは自分の人生を主人公になってデザインして生きているわけです。一つ一つの行動や考え方も全て繋がっているので、自分や周囲の環境を形成していくわけですね。だから、デザインとは見た目を綺麗にするだけのことではありません。「見た目のデザイン」と「広義のデザイン(企業でいえばビジネスデザイン、個人でいえばライフデザイン)」が一体化してこそ、良いデザインになるのだと思います。
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