「孤独」は「タバコ」より健康に悪い。
信じがたいと思うのも無理はありません。目に見えない「孤独」は、肺がんや心臓病のように直接的に健康を害するイメージが湧きにくいためです。しかし、近年、世界中の研究者たちによって「孤独」の危険性が次々と明らかになっています。そして、その結果は、私たちが漠然と感じていた以上に深刻なものだったのです。
2015年、アメリカのブリガムヤング大学の研究チームによって、驚くべき研究結果が発表されました。社会的つながりが希薄な人は、そうでない人と比べて、早期死亡リスクが26%も高いというのです。26%というと、肥満や運動不足よりも死亡リスクを高める要因として知られています。つまり、「孤独」は、私たちがイメージする以上に深刻な健康リスクを抱えていると言えるのです。
さらに、シカゴ大学のジョン・カシオッポ教授が率いる研究チームは、長年「孤独」と健康の関係を研究し、孤独が以下のような病気のリスクを高めることを明らかにしました。
- 心臓病: 孤独な人は、そうでない人に比べて、心臓病による死亡リスクが29%も高い。これは、孤独がもたらす慢性的なストレスや炎症反応が、心臓に大きな負担をかけるためと考えられています。
- 脳卒中: 孤独は、脳卒中のリスクを32%も高めると報告されています。孤独によるストレスは、血管を傷つけ、血圧を上昇させ、脳卒中を引き起こしやすくするのです。
- 認知症: 孤独な高齢者は、そうでない高齢者に比べて、認知症の発症リスクが2倍近くになるという研究結果もあります。孤独は、脳の認知機能を低下させ、認知症のリスクを高める可能性が指摘されています。
- うつ病: 孤独は、うつ病のリスクを高めるだけでなく、症状を悪化させる要因としても知られています。孤独によって、脳内のセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の分泌が減少し、気分が落ち込みやすくなるためと考えられます。
これらの研究結果が示すように、「孤独」は単なる一時的な感情の変化ではなく、私たちの体に確実なダメージを与える、危険因子なのです。「孤独」の危険性をここまで読んで、不安を感じた人もいるかもしれません。「自分は孤独かもしれない…」と不安に感じているあなたに知ってほしいのは、「孤独」は決して特別なものではなく、誰にでも起こりうるということです。そして、「孤独」は、あなたが思っている以上に、克服できるものなのです。
そして、以下のポイントを意識して、日々の生活の中でオキシトシン的幸福を満たす「つながり」を意識的に作っていくように心がけてみてください。
- 地域活動への参加: 地域のサークル活動やボランティア活動に参加することで、共通の趣味や目標を持った人たちと出会うことができます。
- オンラインコミュニティの活用: オンライン上にも、様々な趣味や関心に基づいたコミュニティが存在します。直接会うことに抵抗がある人は、オンラインコミュニティから始めてみるのも良いでしょう。
- 家族や友人とのコミュニケーション: 日頃から、家族や友人とのコミュニケーションを大切にし、お互いに気持ちを分かち合える関係を築きましょう。
- ペットを飼う: 動物との触れ合いは、癒しを与え、孤独感を和らげてくれる効果があります。
「孤独」は、目には見えにくいけれど、私たちの心と体を蝕む、深刻な問題です。「つながり」を意識することで、「孤独」の悪影響から身を守り、心身ともに健康な生活を送ることは十分に可能です。