私たちの腸内には、100兆個もの細菌が生息し、「腸内フローラ」と呼ばれる小宇宙を形成しています。驚くべきことに、その種類の数は1,000種類以上、重さはなんと約1.5kgにもなると言われています。腸内フローラを構成する細菌たちは、大きく「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3つのグループに分けられます。
- 善玉菌: 腸の運動を促進したり、免疫力を高めたりと、私たちの健康に貢献してくれる頼もしい存在です。代表的な菌としては、ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌や、母乳にも含まれるビフィズス菌などが挙げられます。
- 悪玉菌: 腸内で有害物質を産生し、便秘や下痢、様々な病気のリスクを高めるとされています。代表的な菌は、ウェルシュ菌や大腸菌などです。
- 日和見菌: 善玉菌と悪玉菌の優勢な方に味方する、まるで風見鶏のような存在です。腸内環境のバランスによって、その性質を変化させる特徴を持ちます。バクテロイデス属やプレボテラ属などが代表的な菌です。
興味深いことに、この腸内細菌の世界にも、有名な「パレートの法則」が当てはまると言われています。「パレートの法則」とは、経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した法則で、「全体の8割の結果は、全体の2割の原因によって生み出されている」というものです。
腸内フローラの場合、「全体の約8割を占める日和見菌」は、2割の「善玉菌」と「悪玉菌」の勢力図によって、どちらの味方につくかを決めているのです。つまり、腸内環境を大きく左右するのは、全体の2割を占める「善玉菌」と「悪玉菌」のバランスなのです。日和見菌は、善玉菌が優勢な腸内環境では、善玉菌として働き、健康を促進してくれます。逆に、悪玉菌が優勢な環境では、悪玉菌に加担し、体調不良や病気の原因となってしまう可能性があります。なぜか人間社会とも酷似しているのです。
「腸は第二の脳」と言われるように、腸内環境と心の健康は密接に関係しています。「脳腸相関」という言葉が注目されていますが、これは腸と脳が互いに密接に影響し合っていることを示しています。「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンとオキシトシンは、心の安定や幸福感に深く関わる神経伝達物質ですが、驚くべきことに、これらの幸せホルモンの多くは、実は脳ではなく腸で作られているのです!
- セロトニン: 精神安定作用、幸福感、リラックス効果をもたらします。ドーパミンやノルアドレナリンと共に、心のバランスを整える重要な役割を担っています。
- オキシトシン: 愛情ホルモンや絆ホルモンとも呼ばれ、人との結びつきや信頼関係を築くために重要な役割を果たします。ストレスを軽減し、不安を和らげる効果も期待されています。
腸内環境が悪化すると、これらの幸せホルモンの分泌量が減少し、不安感やイライラしやすくなるなど、心のバランスを崩しやすくなると考えられています。逆に、腸内環境を整えることで、セロトニンやオキシトシンの分泌を促し、心の安定や幸福感を得やすくなることが期待できます。腸内環境を改善し、健康を維持するためには、善玉菌を増やし、悪玉菌を減らすことが重要です。そして、そのためには「日和見菌」を味方につけることが非常に重要になります。
そのためには、SNPs(スニップス)遺伝子検査を受けることで、自分自身の体質や、どんな栄養素をどのように摂取するのが効果的なのかを知り、自分に合ったパーソナル腸活をすることです。例えば、ある特定の遺伝子を持っている人は、乳製品の消化が苦手な場合があり、ヨーグルトなどの乳製品を多く摂りすぎると、逆に腸内環境を悪化させてしまう可能性があります。何事もメディアの情報を鵜呑みにするのではなく、自分の先天性を知ってからパーソナライズされた対応をするのが何よりも大切です。