私は、起業してからは経済的な成果「ドーパミン的幸福」に偏った働き方をしていました。その大量行動の結果、つながりは希薄化し、心身の健康を保てずに大病を患ったのだと思います。
情報化社会では効率が求められ、効率を求めるがあまり無駄な時間と感じがちな近所付き合いや地域行事などのタイムパフォーマンスの悪い非効率な時間を減らそうと考えることで、関係性は希薄化してしまいます。しかし、いざというときに助けを得られないという環境下では、心が不安定になります。安心感のある心理状態をつくるには、安心できる居場所やコミュニティが必要で、安心できる土台の上で、仕事の成功や目標の達成を目指しやすくなります。
私は、地元密着型の活動をさせていただく機会に恵まれ、地区の町内会長、商工会議所青年部、子供のバドミントンチームでのコーチなどを経験させていただきました。最初は合理的な考えが強く、参加することに、とても億劫に感じていました。しかし、振り返ってみると人との距離が近すぎる活動において、数字を優先しすぎていた考え方からグラデーションするようにマイルドな考えへシフトチェンジして人格形成に大きく役立ち、先人たちが試行錯誤してきた仕組みで社会は回っていると実感しました。一方で、常に時代は変化するので社会システムが合わなくなるところも出てくることを理解しました。
密着型コミュニティでは金銭だけのトレードではない「相互で支え合うデザイン」が、あらゆるところに散りばめられています。これは物質的に豊かではなかった時代では支え合うのが基本の考え方であったことの証明です。現代では物質的豊かさは担保されており、経済指標を増やしていくことへの重心が大きいのは確かですが、コスパやタイパばかり重視していては、支え合うという気持ちも生まれません。
心身の健康を考えるうえで、コミュニティとのつながりは欠かせないものです。家族、仕事仲間や経営者コミュニティ、自分や子供が所属するスポーツチーム、サロンメンバー、これらのコミュニティ内での緩やかな繋がり、交流、支え合いこそが、心身の健康の大切な要素になっています。
つまり、私たちは3つの幸福物質であるセロトニン、オキシトシン、ドーパミンをバランスよく分泌しやすい状況を作り出すだけで、幸せになりやすいということです。心身が健康で幸せに近づく処方箋は「セロトニン→オキシトシン→ドーパミン」の順番にシフトチェンジしていく必要があります。
①セロトニン的幸福: まずは、セロトニン神経を活性化し、心の土台となる「安定感」「安心感」を築くことが重要です。
②オキシトシン的幸福: 心の安定が得られたら、家族や友人との時間を大切にし、地域活動などを通して、人との「つながり」「愛情」を感じられる機会を増やしましょう。
③ドーパミン的幸福: セロトニン、オキシトシンの土台があってこそ、「ドーパミン的幸福」を目指すことができ、より大きな喜び、より深い満足感を得られるものになります。