「3つの摂理に逆らわない」とは、結論から先にいうと「好きなことをやろう!」ということです。
「らしさあふれる世界の実現」というビジョンを掲げています。この実現に向けて最も大切なことの一つは、3つの摂理に逆らわないということです。
3つの摂理の定義とは
①「自然の摂理」=地球の「らしさ」
②「身体の摂理」=人間の「らしさ」または動物の「らしさ」
③「経験の摂理」=個人の「らしさ」
以上のように僕は定義しており、この3つこそ「らしさあふれる世界」のキモだと考えています。それでは3つの摂理を一つずつ詳しく見ていきましょう。
①自然の摂理(地球のルール)
皆さんもよく分かると思いますが、これは、海や山、大地や空気など僕たちを取り巻いている自然がありのままの形で存在しているということです。例えば、水は必ず低い方へ流れるといったように自然法則に従って循環しています。このように人間が手を加えなくても収まるところに収まるようにできているということですね。
人間は、まるで自然を支配しているかのような行いをしています。例えば、ダムを作ることで川の自然な流れを強制的にせき止めてきました。
人間の視点で見ると、とても大切なことなのかもしれません。しかし、自然界にはもともとダムはなかったのですから、地球側からすればルールが破られた形になっています。お金が儲かるからという理由で無駄な開発が繰り返され、地球のルールを一方的に壊している…このような地球のルールに背いたビジネスモデルは長続きしないと僕は思っています。
これまでの経済活動は人間中心のルールの中で行われてきましたが、世界目標としてSDGsが掲げられた現在、地球環境の保全の意識が高まりつつあります。ですから、これからの社会では、自然を尊重し、環境保護にも積極的に取り組んでいる…そういったビジネスモデルが求められるのではないでしょうか。すでに、プラスチックごみの削減に向けて、多くの企業や店舗で様々な取り組みがなされていますし、どのような環境保全活動に取り組んでいるのかということは、企業イメージにも大きく影響します。
しかし一方で、人間が地球の環境を破壊しつつ発展していくこと自体が、実は自然の摂理だと考えることもできそうです。ただ、この捉え方は謎が深すぎて分からないですね。
※SDGsとは
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。17のゴール・169のターゲットから構成され,地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。参考:外務省 SDGsとは?
②身体の摂理(身体のルール)
身体的なルール(人体の構造のルール)は変えられません。例えば、遺伝子や身体各部の数や位置は変えられませんよね。もちろん外科的に変えようと思えば変えられますし、遺伝子も組み換える技術はあります。しかし、私たちは必ず身体のルールにしたがった状態で生まれてきますので、そこをいじることは不可能だということです。
朝起きて、夜眠るという活動サイクルも、身体の先天的なルールにしたがっている状態です。すなわち、人間には「どのように活動してどう生きていくのか」…そんなデフォルト的なプログラムがあらかじめ備わっているということです。
体内時計という言葉が示す通り、私たちは意識しなくても一定したリズムの流れの中で活動、休息を繰り替えしています。このリズム的な流れが24時間周期で繰り返されているものをサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれています。サーカディアンリズムはあらゆる生物に備わっているのですが、このリズムに背くような生き方や働き方を続けているといずれ必ず無理が来ると思っています。
これは自分の原体験を通して感じたことなのですが、僕の経営する会社がベンチャーなこともあり、毎日昼夜関係なくバリバリ働いていました。働き方に無理があることにうすうす気付きながらも続けていると、やはり身体の調子を崩したり、病気を患ったりしてしまいました。そういった経験をしているので、夜勤の方、お医者さんや看護師さんなど時間関係なく働いてくれている方の存在は本当にありがたく思います。やはり、夜に活動をしていると人間本来のリズムは狂ってしまいますから…。
僕が個人的に発見した法則のようなものがあります。それは、夜勤で働く人や社長をやっている方たちは、自然を求める傾向が強いということです。周りを見てもキャンプに行ったり、釣りをしたりと自然の中で過ごす人が多いように思います。普段の仕事でリズムが崩れてしまっている分、本来のリズムに戻そうと身体が無意識に自然を求めているのかもしれません。実はこのように身体に生じた変化を元の状態に戻そうとする力が人間にもともと備わっていて、この性質を身体の恒常性と呼んでいます。
現代のような貨幣経済のもとで、テクノロジーが急速に発展し、人類はかつてないほどの進化を目の当たりにしてきました。しかし本当に進化といってよいのか、実は退化ともいえるのではないか…、僕はそう考えることがあります。
便利になっているからという理由で進化と捉えるなら、それは結局貨幣経済指標での見方であって、生存、生命といったものを指標とするならば、むしろ不便になっているのではないでしょうか。物質文明が極度に発達した結果生ずる病症、いわゆる文明病という言葉があったりしますが、それに当てはまっているような感じがします。
③経験の摂理(個人のルール)
衝撃的な原体験、育った環境、周りの仲間など、それらから影響を受けてマインドが固まっていくようなことを指しています。僕でいえば、脳腫瘍を経験したときに、死というものを本気で考えるようになり、それをきっかけに価値観が劇的に変化しました。東日本大震災が起きたときのように、当たり前の日常が突然失われるという経験は、生活や仕事に対する価値観を変えてしまいます。
僕は、場所や時間に縛られたくない、自由でありたいと思っているので、なかなか難しいことですが、それに向けて時間をかけて少しずつライフスタイルを変えています。僕のように死を身近に感じるほどの強烈な体験をした後では、どのように生きていくことが自分にとっての理想なのか、その答えを見付けやすくなるはずです。しかしそこまで強烈な経験をすることはなかなかありません。
その点について僕は、別に強烈な経験でなくてもいいのではないかと考えています。例えば「なんか好きだな」「なんか嫌だな」…これぐらい漠然としたものでも、その感情、感覚に反応してあげるのです。
嫌だなと思うところは避ける、心地よく感じるところへは行く。そのように自分の感情や感覚に従って行動していくことが重要なのであり、そのほうが自分の能力を確実に発揮できるのではないでしょうか。
ですから、自分のいるポジショニングがとても大切になってきます。僕自身がそうであったように、間違った居場所で頑張ってみても自分の能力を活かしきれません。「好きこそ物の上手なれ」とはよく言ったものです。
好きなことをやろう!
「自然の摂理=地球のらしさ」「身体の摂理=人間らしさ」「経験の摂理=個人のらしさ」が非常に大事ですから、この3つの摂理に逆らわない生き方をするのがいいと思います。最初にも結論を言いましたが、「好きなことをやろう!」ということですね。
注意しなければならないのは、好きなことをやるといってもそれは決して人間中心で考えてはいけないということです。人間側の狭い視点ではなく、地球のルールを守って、地球の「らしさ」を尊重しながら広い視野で物事を捉えなければなりません。
例えば、今日自分が残したご飯は、地球の「らしさ」にどのように影響するのかを考えてみましょう。日本では年間612万トンの食品ロスが発生し、それらを処分する際には大量の二酸化炭素が排出され、またその炭の埋め立てにも環境負荷がかかります。
そんな風に、自分の行いが結果的に環境にどのような影響を与えるのか、普段からそのようなことを考えて生活していくことが大切だと思います。
自然とともに生きていく中で、時間を忘れるほど夢中になれるものが見付かれば、きっと豊かな人生を送れるはずです。なかなか言葉で表すのは難しいですが、少しでも伝わってくれたらうれしく思います。
※日本における食品ロス
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、日本では1年間に約612万トン(2017年度推計値)もの食料が捨てられており、東京ドーム5杯分とほぼ同じ量1人当たり、お茶碗1杯分のごはんの量が毎日捨てられている計算になります。参照:農林水産省「食品ロスの現状を知る」
自然と共に豊かな人生を送る
テクノロジーの目覚ましい発展とともに私たちは豊かな暮らしを手に入れましたが、一方で自然がないがしろのままになっていました。人間が「自然の摂理(地球のルール)」を意識してこなかったことで、今、地球が限界を迎えようとしています。今の豊かな生活を持続させるにはこれ以上地球のルールを無視するわけにはいきません。ただし、「自然の摂理(地球のルール)」だけを守っていくだけでは不十分です。
個々の人たちが真の豊かさを手に入れるには、自らの身体に対する意識を強く持ち「身体の摂理(身体のルール)」、かつ自分自身の価値観に素直に従っていくこと「経験の摂理(個人のルール)」が必要です。カラダもココロも心地よい状態の人が増えたら、きっとこの社会は優しさで溢れていくはずなのです。さあ、新しい1日を始めましょう。
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